
池上彰が話す前に考えていること
書籍『池上彰が話す前に考えていること』で学べる一番大事なことは、一言でいうと以下の1文です。
まとめガイドは次のページで紹介しています。
池上彰が話す前に考えていること 目次
- 序章 点と点をつなぐ
- インプット編
- 第1章 情報を浴びる
- 第2章 ふるいにかける
- 第3章 解像度を上げる
- 第4章 アナログを武器にする
- 第5章 思いをキャッチする
- アウトプット編
- 第6章 書いて伝える
- 第7章 話して伝える
- 思考を養う生活
- 第8章 ルーティンを磨く
- 第9章 時間の手綱を握る
- 第10章 読書を心の糧とする
- 第11章 後悔なく生きる
はじめに
テレビでニュースを観ていて、「池上さんの解説は、どうしてこんなにスッと頭に入るんだろう?」と不思議に思ったことはありませんか?
その秘密は、単なる「話し方のテクニック」ではなく、「話す前の徹底的な準備」と「思考の整理」に隠されていました。
本書は、ジャーナリスト・池上彰さんの集大成ともいえる一冊です。
生放送の現場リポート、子ども番組の司会、選挙特番での鋭い質問など、唯一無二の経験で培った177の実行スキルが収録されています。
情報をどう取り込み、どう整理し、どう相手に届けるのか。
「わかりやすく伝えるプロ」の舞台裏の思考プロセスが余すところなく公開されているのが本書の最大の魅力です。
本書を通じて池上さんが最も伝えたかったパワーワード、それは慶應義塾の塾長だった小泉信三の言葉を引いて語られる**「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」という教養の本質にあります。
目先のテクニックではなく、じわじわと効いてくる「漢方薬のような教養」を蓄えながら、常に「相手の立場」に立って思考を巡らせること。それが本書の核心です。
本書は実行スキルとしてそれぞれ短い説明が集められた書籍ですので、大きな章立てとしてまとめることはなかなかできませんが、その中でも特に重要と思われる3つのポイントにまとめて詳しく説明します。

3つの重要ポイント
情報を「大量に浴びてから捨てる」技術
情報を「大量に浴びてから捨てる」技術

多くの人は、無駄を省いて「自分にとって有益で正しい情報」だけを効率よく集めようと考えます。
しかし、それでは情報の深みが出ず、自分の考えが「たこつぼ化」してしまう危険があります。
自分が信じたい情報や心地よい情報だけを拾っていると、客観性を失い、相手の疑問や批判に答えられない「一方通行の説明」になってしまいます。
インターネットで検索を重ねるほど、自分の関心事に偏っていく「エコーチェンバー」現象が起きるからです。
池上さんも本書で「ネットは"たこつぼ"化する」と明確に警鐘を鳴らしています。
池上さんは、「一度は情報を大量に浴びる」ことを推奨しています。
日頃から12紙もの新聞に目を通し、あえて自分とは異なる意見や批判といった「ノイズ」も積極的に取り入れるのです。
毎日12紙の新聞に目を通し、自分とは異なる意見や批判も含め「ノイズを浴びる」ことで、思考の解像度を上げる。
池上さんの実践している方法
大量の情報を浴びることで、自分の説明の弱点が見え、思考の解像度が上がります。
多くの意見を総合することで、初めて物事の全体像が見えてくるのです。
そして池上さんが大切にしているのは「事実・意見・推測の峻別」です。
新聞記事には「性格」があり、大まかに2つのパターンに分けられます。
1.事実を報じるもの
2.意見、推測、見通しを述べるもの
私たち読み手に求められるのは、「どこまでが事実で、どこから先が意見や推測なのか」を峻別する力でしょう。
この基本を守れるジャーナリストは今や少数派とも言われています。
だからこそ、この原則を身につけることは大きな武器になります。
「ふるい」にかける習慣をつける
大量の情報を浴びた後で、自分や相手に関係するものだけを残し、他は思い切って捨てます。
「情報は拾い集めた後に選ぶ」という順番が重要です。
アナログを積極的に活用する
新聞記事を切り抜いたり、手書きのメモを作ったりして、情報を「手触りのあるかたち」で整理することで、記憶に定着しやすくなります。
デジタルに飛びつく前に、「書く」という行為を通じて情報を整理する習慣がとても効果的です。
「本屋」に足を運ぶ
本屋は、誰かが何かを伝えようとして作った言葉の宝庫。
気になるテーマを思い浮かべながら棚を眺めると、思わぬヒントが目の前に現れることがあります。
ネットの検索では出会えない「偶然の発見」が生まれる場所です。
相手の頭の中に「地図」を描く伝え方
相手の頭の中に「地図」を描く伝え方

自分の知識を一生懸命伝えようとすればするほど、相手が困惑した表情をすることがあります。
それは、話のゴールが見えていないからです。
話し手がゴールを示さずに細部から話し始めると、聞き手は情報の迷路に迷い込んでしまいます。
池上さん自身、大学時代のガールフレンドに「あなたの話ってホントつまらない」とそっぽを向かれた苦い経験を持っています。
相手が「何を知らないのか」を想像できていないことが、伝える力を妨げているのです。
伝えるポイントは「最大でも3つまで」に絞り込みます。
人間は3つまではスムーズに理解できますが、4つ以上になると混乱し、記憶に残りにくくなるという「3の原則」があるからです。
要点は3つまで。「これから3つのポイントを話します」と宣言することで、相手は安心して話を聞くことができる。
池上流の伝える鉄則
「これから3つのポイントを話します」と最初に宣言することで、相手は安心して話を聞くことができます。
これは、カメラの三脚が3本の脚で安定するのと同じように、説明に安心感と説得力を与えます。
また池上さんが強調しているのが、「頭の中に素人を置く」という考え方です。
常に自問自答し、伝える相手への想像力を持っていないと、わかりやすい説明はできない。 「初めて聞く人ならどこでつまずくか?」を常に意識することが重要です。
何かを説明するとき、私たちはつい自分の知識を前提に話してしまいます。
しかし、相手は必ずしも同じ知識や背景を持っているわけではありません。
この「相手ファースト」の発想こそが、わかりやすさの核心です。
話の「地図」を渡す
「今日はここから出発して、あそこまで行きます」というルートを最初に示し、最後に再び結論で締めくくります。
相手に「どこへ向かっているのか」をあらかじめ見せることで、迷子にならずに話についてきてもらえます。
「慣用句に逃げない」
「嬉しい悲鳴」「二の足を踏む」といった手垢のついた表現に頼るのをやめましょう。
池上さんは「自分の中に落とし込んだものを自分の言葉で話せているかどうか」が本質だと語っています。
難しい言葉を使うより、自分がちゃんと理解した上で平易に語る力のほうが、相手には伝わります。
「論破は不毛」という視点を持つ
相手の意見を論破することに力を使うのは、長い目で見れば何も生みません。
「相手に勝つ」ではなく「相手に伝わる」を目標に据えることで、コミュニケーションの質が根本から変わります。
文章を書く前に「ねぇねぇ、大変!」と書く
池上さんが紹介する実践的なテクニックとして、文章を書き始める前にまず「ねぇねぇ、大変!」と書いてみるというものがあります。
この一言を書くだけで、一番伝えたいことが浮き彫りになります。
伝えたいことが明確でなければ文章は迷子になりますが、この方法で「これはどうしても伝えたいんだ」という気持ちを固めてから書き始めることができます。
教養は「漢方薬」のように効いてくる
教養は「漢方薬」のように効いてくる

日々の仕事に追われ、ついスマホばかり見て一日が終わってしまう……。
そんな悩みを持つ人は少なくありません。
すぐに役立つノウハウやネットの細切れの情報ばかりを追っていると、表面的な知識は増えても、物事の本質を捉える「思考の土台」が築けません。
池上さんも本書の中で、「安易に"答え"だけを求めて、それ以上のことを考えなくなっている人が増えている」と警鐘を鳴らしています。
これは非常に危険な状態だとも述べています。
「時間は自分でつくるもの」という意識を持ち、10分や15分といった「こま切れの時間」を活用して本を開く習慣を身につけます。
池上さんは新人記者時代、深夜のサツ回り(警察の巡回取材)の合間に自動販売機の明かりで本を読んでいたといいます。
「長距離移動はチャンスタイム」として、飛行機や新幹線に乗る際には必ず本を持ち込むことも習慣化しています。
読書はすぐに効果が出るサプリメントではなく、漢方薬のようにじわじわ効いてくるもの。一見仕事には結びつかないような教養こそが、長い目で見たときに「伝える力」の深い裏付けとなる。
池上さんの読書観
慶應義塾の塾長だった小泉信三はかつてこう言いました。 「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」
読書はすぐに効果が出るサプリメントではなく、漢方薬のようにじわじわ効いてくるものだからです。
一見仕事に結びつかないような教養こそが、長い目で見たときに「伝える力」の深い裏付けとなります。
池上さん自身、フリーになってからこのことをひしひしと感じているといいます。
「迷ったら買う」
書店に足を運び、少しでも気になった本は実際に手にとって読みます。
「これが今の自分に役立つか」ではなく、「なんとなく気になる」という直感を大切にすることが、思わぬ教養の種まきになります。
アウトプットを前提に読む
「誰かにこの内容を説明するなら?」と考えながら読むことで、理解の定着率が格段に上がります。
池上さんが長年実践してきた「解説する」という行為そのものが、最強のインプット法にもなっているのです。
SNSとの距離を意識する
池上さんはSNSをやらないことを明言しています。
「他人の悪口を読まされても仕方ない」というのがその理由です。
オンラインに使う時間を減らし、その分を読書や深い思考の時間に充てることが、長期的な知力の向上につながります。
重要ポイント+1
"真実を伝える"という言葉は嫌いです
池上さんは対談の中で、「"真実を伝える"という言葉は嫌いです」という意外な本音を漏らしています。
人間が捉えられるのは、あくまでも「事実」の断片に過ぎません。
その断片をどう組み立てるかで、見え方は全く変わってしまいます。
池上さんは言います。
仮に真実というものがあって、それが銅像の形をしているとしましょう。この銅像を形づくる破片を集めることなら私たちにもできるけど、その破片の組み立て方によって銅像の完成形はまったく違うものになる。だから「これが真実だ」って高らかに宣言するんじゃなくて、「少しは真実と呼ばれるものに近いのかな?」という気持ちで追求するのが我々の仕事だと思っています。
この知的な誠実さこそが、池上さんの解説に圧倒的な信頼感を与えているのです。
また、「しくじりは無駄にならない」という言葉も印象的です。
引っ込み思案だった若い頃の失敗、新人記者時代に「あたかも知っているかのようなフリ」をして相手に薄々バレてしまった苦い経験。
そういった積み重ねが、今日の池上さんを形作っているのです。
「完璧主義は脇におく」という姿勢も一貫しています。
100パーセントの完璧を目指すより、常に謙虚に学び続け、失敗から教訓を得ることを優先する。
この姿勢が、長年にわたって第一線で活躍し続ける理由なのかもしれません。
まとめ
本書は、単なる話し方のテクニック集ではありません。
情報を大量に浴びて「ノイズ」を取り込み、相手に合わせて徹底的に「削ぎ落とす」という、「準備」と「相手への想像力」を説いた思考の設計図です。
特に重要な3つのポイントは次のとおりです。
- 情報は「大量に浴びてから捨てる」
- エコーチェンバーを避け、ノイズも含めた多様な情報に触れた上で取捨選択する
- 相手の頭の中に「地図」を描く
- 要点は3つまでに絞り、話の地図を先に渡し、「頭の中に素人を置く」発想で伝える
- 教養は漢方薬のようにじわじわ効く
- すぐに役立つことを追い求めず、読書や深い思考を習慣にして長期的な土台を築く
読者からは以下のような声が多く寄せられています。
「説明のうまさは話術ではなく、ほぼすべて準備で決まるという現実に気づかされた」
「1つ1つの項目が短く、スッと頭に入る」
「アナログを活用する姿勢が新鮮だった」
「『しくじりは無駄にならない』という言葉に勇気をもらった」
安易に答えを求めず、「自分の頭で考える習慣」を身につけてほしいという願いが込められています。
安易に、そして安直に「答え」を求めずに、自分の頭で考えてみる。そんな習慣を身に着けてほしいと願っています。そんなトレーニングのために本書を役立てていただければ幸いです。
目先の効率だけを追い求めるのではなく、じわじわと効いてくる「教養」を蓄え、常に「相手の立場」に立って思考を巡らせること。 それが、一生モノの「伝える力」を磨く唯一の道なのです。
【内容情報】
わかりやすさナンバーワン! 伝えるプロの、すごい「頭の使い方」とは。 池上さんの解説は、なぜあんなにわかりやすい? 「要点は3つまで」「相手ファーストで話す」「論破は不毛」「ノイズを浴びる」──伝えるプロのすごい頭の使い方とは。生放送の現場リポート、子ども番組の司会、選挙特番での鋭い質問など、唯一無二の経験で培った177の実行スキルを収録。池上流・思考整理術のベスト版!【著者情報】
池上彰が話す前に考えていること 内容紹介より
池上彰(いけがみ・あきら)
1950(昭和25)年、長野県生まれ。ジャーナリスト。名城大学教授、東京科学大学特命教授、立教大学客員教授など複数の大学で教鞭を執る。慶應義塾大学卒業後、NHK入局。報道記者や番組キャスターなどを経て、1994年から11年間、『週刊こどもニュース』でお父さん役を務める。2005年に独立。『伝える力』『なぜ、読解力が必要なのか?』など著書多数。







