藤子・F・不二雄SF短編集作品「間引き」から分かる一番大事なこと
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SF漫画作品「間引き」から大切なことを考察

藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>2 定年退食

「間引き」

ドラえもんでお馴染みの、漫画家である藤子・F・不二雄のSF短編集の中で、ひときわ衝撃さを持つ「間引き」という作品があります。
藤子・F・不二雄は、藤子不二雄としてコンビを組みつつも、解消後の名前としては、本名の藤本弘の名字のFを取って、藤子・F・不二雄として活動していました。
1996年に亡くなりますが、死後も偉業が讃えられ、数々の賞を受賞したり、作品を展示した藤子・F・不二雄ミュージアムも開業されました。

このSF短編集は、ドラえもんのような子供向けの作品とは異なり、青年向けの作品です。
藤子・F・不二雄は、子供向けの作品を執筆するかたわら、ビックコミックなどの青年誌にもSF短編を発表していました。しかしながら、子供向けのようなダントツの読みやすさは維持しつつ、子供向けと気を遣うことなく、ダークな部分も含め、アイデアを存分に表現した作品ばかりです。

藤子・F・不二雄の短編集はいくつかシリーズ名が変わってい出ています。

  • 藤子・F・不二雄SF短編集
  • 藤子・F・不二雄 異色短編集
  • 藤子・F・不二雄 少年SF短編集

本作品「間引き」は、手元にある本の中では、異色短編集1巻「ミノタウロスの皿」に収録されています。

作品の概要は以下のとおりです。

「間引き」概要

間引き

人口爆発により食料危機に陥った世界が舞台設定です。
年2%の増加率で人口が増え続ける日本では配給制度が採用され、国民が空腹で苦しむ中、カロリー保険という保険も登場する時代です。

主人公である男性は、コインロッカーの管理人で、子どもをコインロッカーに捨てる事件をよく知る人物です。目の前で理由なく殺人が行われることもあり、死体を見ることにも慣れてきている様子です。そんなときに、新聞記者が訪れ、簡単に人殺しが起こるようになってきたのは、人類の間引きだという仮説を訴えてきました。

どの種の動物であっても、個体数には限界があり食物連鎖でバランスが保たれています。人類も昔は疫病、戦争、飢饉がその調節役になって一定に保たれていました。しかし生物界の異端児である人類は、それらの問題を解決させ、個体数の増加を認めるようになった結果、大いなる間引き機能が動き出しているのではないかということです。コインロッカーに子どもを捨てることは氷山の一角にすぎず、人類から道徳心とか愛情が消滅しつつあるのではないかということです。

「間引き」シーン一部

「愛」なんてものは種の存続のための機能のひとつにすぎず、じゃまになればとっぱらってしまえということなんじゃないかと記者は続けて説を唱えます。
「衣食足りて礼節を知る」
適当な人口にまで減ったとき、人類は再び愛を取り戻せるかもしれませんと。

主人公の男性も、空腹と冷たくなった妻に不満を抱きながら暮らす一人で、はじめは話を聞き入れなかった彼も、記者の話に引き込まれていっている様子が見られます。
そして最後には、妻に青酸カリを入れられたおにぎりを食べさせられ殺されてしまいます。

ポイント

この作品が作られた1970年代は、親がコインロッカーに赤ん坊を捨てるという事件(コインロッカーベイビー)が相次ぎ、社会問題となっていた時期でもありました。藤子・F・不二雄もここからアイデアを膨らませたことでしょう。

最近では新型コロナウイルスが人口抑制の一翼を担っていると考えられ、このような大いなる力は、地球レベルでの生命維持機能が動き出した「ガイア理論」で考える人もいます。
もちろんこの「間引き」という作品はSFですのでフィクションなわけですが、愛情の消失という大いなる力を「ガイア理論」と結び付けた考え方をする人がいても不思議ではありません。話の中では、自然の摂理とか、大いなる宇宙意志の介入と表現されています。

ここで大事なのは、この大いなる力が本当にあるのかということではありません。

衣食足りて礼節を知る

作品の中でも使われている「衣食足りて礼節を知る」という言葉。
意味は、着るものや食べるものが十分にあってこそ、人は礼儀や節度をわきまえるようになる、ということです。

つまり作品では、人口が減って、食料が行き渡って空腹が満たされることで、愛を取り戻すことができるという意味で使われています。

この言葉に大事なポイントがあります。

シャンパンタワーの法則

「シャンパンタワーの法則」というものがあります。
シャンパンタワーとは、シャンパングラスをピラミッド状に積み重ねて、上からシャンパンを注ぐ催し物で、結婚式などでも行われたりします。

シャンパンタワー

そのシャンパンタワーの1番上を自分自身と見立てて、2段目、3段目と段々と身近な人から段々とエネルギーを注ぐように、エネルギーを注ぐ順番を自分からとする考え方がこの法則です。
まず人のためではなく、自分を満たしてから人に注ぐことが必要です。そうしないと、十分に相手のためにエネルギーを注ぐことができないからです。

自分を犠牲にしたり、相手を優先しすぎることは、両者のとっての本当の得が得られません。
心のどこかで、自分がこんなに我慢しているのにという感情が生まれかねません。

「衣食足りて礼節を知る」も正に、まず自分を満たすことで、人を優しい気持ちで見ることができるようになり、愛情を注ぐことができるということです。

Win-Win

シャンパンタワーの法則のとおり、自分をまず満たすということは大切です。しかし、自分を満たすために人を傷つけたり、損するようなことがあっては本末転倒です。

このエネルギーを注ぐ過程でも、Win-Winの考え方は重要です。

名著「7つの習慣」でも言われるWin-Winの考え方として、自分と相手、どちらか片方でも妥協や損をすることがあってはならず、互いに得する考え方があります。
これをすれば相手もWinだろうと勝手な思い込みもNGです。
相手にとって本質的にWinであることを理解する必要があります。

7つの習慣の記事は以下にあります。

「7つの習慣」から分かる一番大事なこと
逆引きする

自分が人に優しくないと感じるときには、逆に自分が満たされていないからではないかと疑うことが大事です。
少し意地悪をしたくなったり、とげのある表現をしてみたり、素直に人の成功に喜べない状態は、満たされていない状態である可能性が高いと言えます。

それは物理的に何かが足りていない場合もあるでしょうが、既に満たされていることに気付いていない、満たされているにも関わらず欲深くなっている状態かもしれません。

そのときに、自分の満たされ具体を疑い、それに気付いたときにはワンステップ進んだ状態と言えます。
そして、仮に自分が満たされていたとしたら同じ思いを抱くだろうかと考え直すとよいでしょう。

まとめ

本作品中で、殺人は変わらず犯罪ですし、刑事も出てきます。ルール上NGなことには変わりがありません。
しかしコインロッカーに赤ちゃんを遺棄しにきた親男女も、悪びれることなく「あたしたちが何やったって言うのよ!自分がつくったもの自分で捨てて悪いのかよ!」と言い放す始末です。
想像ですが、食糧危機による空腹をなんとかするために、人口を減少させたい意識が世間一般的になったことで、殺人が黙認されてきている世界なのかもしれません。

感情というものはコントロールできる領域ではあるはずなのですが、コントロールする前に行動してしまったり、コントロールすることを放棄することもできてしまうようです。
感情の中で、理性と欲求が戦うこともあるでしょう。

欲求にはマズローの五段階欲求が有名です。

第一段階は、生理的欲求で、生きているための本能的な欲求です。食事や睡眠、排泄などが当てはまります。
第二段階は、安心の欲求で、危機を回避して安全・安心の暮らしがしたいという欲求です。健康と環境などが当てはまります。
第三段階は、社会的欲求で、集団に所属したり仲間を求める欲求です。家族や会社、組織など自分の居場所を求めることが当てはまります。
第四段階は、承認欲求で、社会や所属する集団の中で高く評価されたり認められたいという欲求です。この中でも2段階あり、低位の承認欲求の中には、SNS等で「いいね」をもらうような他人依存の欲求があります。高位の承認欲求は、自分の成長に対する達成感など自分が自分を承認する欲求が当たります。
第五段階は、自己実現の欲求で、自分にしかできないことを達成したい、自分らしく生きたいという欲求です。ここから社会をよくしたいとか世界に貢献したいという超越した欲求に繋がると言います。

「衣食足りて礼節を知る」は故事成語で、中国の書物である「菅子(かんし)」が由来です。少し古い表現でもあり、相手に優しくなれるくらい自分を満たす必要十分の欲求を「衣食」と表現していますが、この欲求が深まったらそれはそれで人に優しくなれるまで遠ざかりそうです。

シャンパンタワーの考えは非常に大切ですが、欲深くいるといつまでたっても自分が満たされないという可能性があります。
人に優しくないと感じたときには、「既に満たされていることに気付いていない」「満たされているにも関わらず欲深くなっている」という可能性も気付けると、人生はより円滑に回るのではないでしょうか。

衣食足りて礼節を知る。人に優しくなれていないときは、自分の満たされ具合に気付き満たすことを考える

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