
思考の整理学
書籍「思考の整理学」で学べる一番大事なことは、一言でいうと以下の1文です。
目次
- グライダー
- 不幸な逆説
- 朝飯前
- 醗酵
- 寝させる
- カクテル
- エディターシップ
- 触媒
- アナロジー
- セレンディピティ
- 情報の“メタ”化
- スクラップ
- カード・ノート
- つんどく法
- 手帖とノート
- メタ・ノート
- 整理
- 忘却のさまざま
- 時の試錬
- すてる
- とにかく書いてみる
- テーマと題名
- ホメテヤラネバ
- しゃべる
- 談笑の間
- 垣根を越えて
- 三上・三中
- 知恵
- ことわざの世界
- 第一次的表現
- 既知・未知
- 拡散と収斂
- コンピューター
ポイント
本書は、東大生に多く親しまれと言われているおすすめの本です。目次を見て難しそうな印象を受けるかもしれませんが、脳を活用する上で本質的な考え方が分かりやすく説明されています。
はじめに、本書ではまず問題提起として「グライダー」を挙げています。
これまでの学校教育は偏差値至上主義が支配し、知識の詰め込み教育でした。それはまるでグライダー人間の訓練所のようで、グライダーの能力が高くても自力で飛び上がることができない、つまり自分でものごとを考えるとなると途端にどうしていいか分からなくなってしまう教育だったと言います。
以下は本書で紹介されている、自分で新しいことを考える上で特に重要なポイントです。
考えを寝かせる
どうしても解けない問題は、いったん寝かせて時間をおいてから考えることが必要です。
一人でひとつのことだけを考えていると、思考の自由な働きを妨げてしまい創造性を失ってしまうからです。
前の晩に解けなかった問題が、翌朝に解けるということがあります。
特に朝は「朝飯前」という言葉のとおり最高の時間帯だと言います。
また、メモや手帳、ノートを取ることも重要です。
頭はなるべく知識を蓄える倉庫よりも新しいことを考え出す工場であるべきだと言います。
頭の知識は忘却が伴うこともあり、知識や情報を蓄えるのは、忘却のないコンピューターなど外部のモノに任せ、頭を創造的な面で使う方が望ましくあります。
異分野異領域の人と話す
積極的に外に出て専門分野が異なる人と触れ合うことが、アイデアを生み出すために重要です。
同じ専門の人間同士では、話が批判的になったり話が小さくなってしまうことがあるが、違った目線を持った人からの質問は、ときに新しいヒントに生かされることを含んでいたりすると著者は言います。
また、自分の声を音にすることで、声に考えさせるということもできます。
例えば書いた原稿を読み返す際に、沈黙の読み返しでは気付かないが、音読することで読み遣えるところがあればそれは必ず問題がひそんでいると言います。
まとめ
上記で異業種との交流が必要と触れていますが、別に著者より具体的な方法についてのコメントがあります。
- 1回ではなく定期的に会ってしゃべる
- 学生時代の仲間でなく最近の付き合いの中で集まる
- 少なくとも3人
異業種の知識は本でも得られそうですが、本では固定された内容を1人で解釈しているだけなので、生身の人間と話すことが大事だと言っています。
思考の整理学という題目にあるとおり、脳の特性と活かし、時代の流れと共に生きる上で、忘れるものは忘れ、外に任せられるものは任せ、思考という本来持っている力を活かすことに注力するための方法について書かれた本だと感じました。
あとがきで著者は、「考えるのは面倒なことと思っている人が多いが、これほどぜいたくな楽しみはない。何かのために考える実利思考のほかに、ただ考えることが面白い純粋思考のあることを発見して良い時期になっているのではないかと」と述べています。
この純粋思考を楽しむ時間をもっと確保できると、人生はもっと楽しくなり、考えることも楽しくなるのではないでしょうか。
【内容情報】
思考の整理学 内容紹介より
アイディアが軽やかに離陸し、思考がのびのびと大空を駆けるには? 自らの体験に則し、独自の思考のエッセンスを明快に開陳する、恰好の入門書。考えることの楽しさを満喫させてくれる本。
【著者情報】
外山 滋比古(トヤマ シゲヒコ)
1923年生まれ。東京文理科大学英文学科卒業。『英語青年』編集長を経て、東京教育大学、お茶の水女子大学で教鞭を執る。お茶の水大学名誉教授。専攻の英文学に始まり、エディターシップ、思考、日本語論などの分野で、独創的な仕事を続けている。『思考の整理学』『「読み」の整理学』『知的創造のヒント』『アイディアのレッスン』『異本論』『日本語の作法』『忘却の整理学』『幼児教育でいちばん大切なこと──聞く力を育てる』など著書多数。